映画紹介⑥The whale
ハローワールド、アル中映画マニアです。
最近、食べ過ぎなのか飲み過ぎなのか、ちょっとお腹周りがキツイ気がしております。
三十路の準備期間に突入し、脂肪の落ちにくさを実感する今日この頃。
学生の時の同じ量とペースで飲み食いしてたら、あっという間に太ってしまいそうです。
だがしかし、飲まなきゃやってられない夜がある、食わなきゃ消せないストレスがある、そんな多忙でストレスフルな現代人様方に1人の悲しい末路を辿った人間の映画をご紹介いたします。
今回ご紹介するのは【The Whal】という映画です。
冒頭、画面に映るのは重度肥満男性のゲイビデオ自慰行為。
歩行器がなければ歩くこともままならない巨体、顔に溜まる脂汗。
自慰行為によって始まる心不全、読み上げられる謎のエッセイ。醜悪極まりない。
彼の名前はチャーリー。重度肥満による末期の心不全に犯されており、余命は僅か。
友人に諭されるもの「お金がない」ことを理由に病院に行くことを頑なに拒否し続けています。
看護師である友人(リズ)により、余命が一週間程度であることを告げられた彼は、8年前に恋人と暮らすために捨てた娘(エリー)に会い、親子の絆を取り戻そうとするのだが、、、
あらすじはざっとこんな感じです。
まず、この映画の全てのシーンがチャーリーの自宅のみで撮影されています。
冒頭のシーンもそうですが、不快感と同時に、視覚的にも聴覚的にも息苦しさというか、閉塞感に息が詰まりそうな感覚を覚えました。外が常に薄暗いのもこれに拍車をかけています。
また、悲しい出来事があるたびに彼は過食を行うのですが、このシーンは見ていて痛々しいものがあり、思わず顔を顰めてしまいます。
彼は英語の先生をしており、オンラインの授業で常にカメラをオフにした状態で講義を行なっています。
言葉遣いも綺麗で文学的な表現も多く、姿の見えないカメラ越しだと魅力的な人物のように思えるのです。
劇中、新たに出会う人々にチャーリーは都度、「僕は醜いか?」と彼は尋ねるのですが、皆返答をまごつかせます。
「はい」と言いたいんだろうな、でも言えないんだろうな、私も彼を醜いと思ってしまってますもん。
でもやっぱりそのリアクションを見るたびに彼は傷ついているのです。
やはり他人を気にせずにいられる人なんていないもんですね。
娘に前向きな言葉を放つシーンも、最後に娘に何かを遺そうとする意思も、過去の過ちはあれど、きっと正しいことです。
視聴後、彼の「最後に何か正しいことをしたいんだ」という目的は達せられたと思っています。
宗教、性嗜好、外見、etc...
差別や偏見から抱いた蔑視を裏切り、彼の優しさと人生の終わり様を見た時、彼を醜いと評していた自分が恥ずかしくなりました。
決して手放しで賞賛できる主人公でないことは確かです。
ただ、過去の過ちを償おうとする姿勢や、決して失くすことのなかった娘への愛情は伝わったと信じたいです。
この紹介記事の最初で私は「悲しい末路を辿った」と書いたのですが、チャーリーにとっては悲しい末路だとは思ってません。
娘視点の話だということだけは補足させてください。
自分の余命が残り一週間だと分かったら、私は何をするんだろう。
そんな想像妄想に現実的な足掛かりをくれた映画です。
重い内容であり観る人を選ぶ映画だと思います。大きな感動というよりはジワジワと胸を締め付ける悲哀とセットの涙になると思います。
チャーリーに対して自業自得だという冷たい意見があるのも理解できます。
ただ、大抵人間なんてグレーですよね、聖人君子の方が私は気色が悪いと思ってますので。
それでは次回の更新をお楽しみに。
P.S.「白鯨」読んでみたいですね。